2014年7月20日日曜日

消化器病の”暗黒大陸”~膵臓~膵がんについて 2011年5月27日記事

消化器病専門医として、今回は膵がんについてお話しいたします。
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 膵臓は消化器内科医の中でも ”暗黒大陸” といわれ、早期に膵がんを見つけることは、専門医にとっても極めて難しいのが現状です。それは膵臓の部位に関係があります。

 膵臓は胃の裏、上腹部の一番奥、ほぼ背骨の前にあるため、胃や大腸のように簡単には精密検査ができません。

 また、がんが発生すると、周囲に豊富に存在するリンパ管や血管に、早期からがん細胞が浸み込み易くいため、自覚症状が出てきて発見された頃には、すでに広範なリンパ節・多臓器転移をきたした状態のことが多く見受けられます。

 病気の広がりが大きい場合、手術で取りきることは不可能なため、抗がん剤による化学療法を選択せざるを得ないケースが多いのが実情です。

 手術が可能な段階で膵がんを診断できたら、と考える小生の膵がんに対する考えは以下の通りです。 膵がんを早期に見つけるには、まず膵がんを疑うことが大切です。

 「黄疸や肝障害を伴わない場合でも、原因不明の食欲不振や体重減少、倦怠感といった ”おなかの不定愁訴” に対し、腹部エコーでスクリーニングを行い、必要ならば腹部の造影CTをとってみることをおすすめする」

以下に専門施設の膵がんの説明を載せましたので、ご興味のある方はご覧ください。

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(国立大阪医療センター がんセンター http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/suizos.htmlから引用、一部編集)
 
 膵がんの発生率は胃がんや大腸がんに比べ1/3~1/5程度ですが、がんによる死亡原因の第5位です。これは膵がんの治療が困難であることに関係しています。

 膵がんが難治がんである原因は、膵臓がんには特異的な初発症状がなく、膵臓がんと診断された時には大半が高度に進行しており、既にがんが膵臓の周囲の重要臓器に拡がっていたり、肝臓などの他臓器にがんが転移していて、7割から8割の方は外科手術の適応にならないこと、また、たとえ切除可能であっても早期に再発を生じることが多いことが挙げられます。

 膵がんの危険因子として、肉食、喫煙、排気ガス、化学物質などが挙げられますが、統計学的に明らかに関係が証明されている因子はありません。人口の高齢化とともに急速に増加し、最近では人口10万人あたりの罹患率はほぼ10人です。慢性膵炎や糖尿病があると膵がんの危険性が増す可能性が指摘されています。

 症状は腹痛と黄疸が多く、次いで食思不振、腰背部痛、全身倦怠感、体重減少などで、特徴的な症状が乏しいのが、診断の遅れにつながっています。(糖尿病発症や糖尿病の経過中の急な悪化が診断のきっかけとなることも多いので、新たに糖尿病の治療受けようとされる方や糖尿病が急に悪化された方は、膵臓がんの検査を受けられることをお薦めします)

 膵がんではその病巣占拠部位により、臨床症状が異なります。
 膵がんの60%は頭部にできますが、膵頭部には胆管が通っているため、膵頭部のがんでは胆管が狭くなって胆汁の流れが悪くなり、黄疸が生じやすいのが特徴です。この他、膵頭部がんでは、上腹部痛、背部痛、食思不振、全身倦怠感、心窩部不快感、腹部膨満、体重減少など一般的な消化器症状と同様な症状が表れます。がんが進んでくると、腹水、消化管出血がみられることがあります。

 膵体部や尾部のがんは、膵頭部がんと比べその発生場所から胆管に影響が及びにくい → 黄疸も出現しにくく、その発見はさらに遅くなることが多いため、診断された時点では、手術不能と言う場合が多くあります。
 症状としては、上腹部痛や腰背部痛が多いですが、体重減少、腹部膨満、便秘、下痢、糖尿病の悪化など不定な症状が多く、たまたま別の病気でCTや超音波検査をされた場合に見つかることも多くありません。がんが進むと腹部腫瘤や腹水のみられることもあります。

 血液検査では膵酵素(アミラーゼ、エラスターゼ1など)の上昇、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、DUPAN-2など)の上昇、胆道酵素(ALP、γGTPなど)の上昇、耐糖能異常(血糖、HbA1cなどの上昇、インスリンの低下)が膵がんを疑う参考になります。

 腫瘍マーカーはがん自体から血液中に放出されるCEA、CA19-9、DUPAN-2を測定するもので、早期の小膵癌ではあまり高値とはならないことが多いので、腫瘍マーカーでの早期発見には限界があるとされています。

 膵酵素(アミラーゼ、エラスターゼ1など)の上昇や耐糖能異常(血糖、HbA1cなどの上昇、インスリンの低下)はがんに附随する膵炎によるものであり、胆道酵素(ALP、γGTPなど)の上昇はがんによる胆管の圧迫によるものと考えられます。しかしながら、これらの検査は、必ずしも膵がんに特徴的なものではありません。

 画像検査では腹部エコー、CT、MRIで膵に腫瘍が見つかることが多く、診断上重要です。

 特に、腹部エコーは簡便で、非侵襲であるため、膵病変のスクリーニング検査として有用です。
 これらの画像検査は、ある程度の大きさ(だいたい直径1cm以上)がないと腫瘍かどうか明らかにならないために、完全に治せる段階の早期がんを見つけることはできません。
 以上

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