2014年7月30日水曜日

症例9 原因不明の下痢と体重減少~小生見れども見えず、でもわかる人にはわかるんですね (^_^;)  「Cronkhite-Canada症候群」  2012年2月5日 記事

2月5日(日)晴れ
120205park
 朝晴れて気温も氷点下ではなかったので、駐車場の除雪を行いました。

 消雪パイプを設置してはありますが、島状に積雪が残り、駐車スペースが無駄になっていましたので。午前6時半から午前9時まで、一人スノーダンプを黙々と押しまくりました。

 孤独な肉体労働を続けた結果、除雪は終了。

 万歩計は七〇〇〇歩余を示していました。疲労感と同時に達成感がありました。

 運動不足の冬には、たまには体を酷使することもいいのかも知れません、背中と肩の痛みを別にすれば…。

今回は小生のお恥ずかしいお話を一つ。

************************************

 初秋の頃、50歳代の女性が慢性の下痢と体重減少を訴えて外来を受診されました。

 春から約10kg痩せ、一日5行以上の下痢が止まらないというその方は、頭髪の脱毛にも悩まされており、痩せたためか、白かった皮膚もやや褐色調になったとのことでした。
 
 早速入院の上、胃カメラ、大腸ファイバー、腹部~骨盤腔CT等を受けていただきました。

 胃には細かいイクラ状の発赤が多発しており、大腸にはポリープが散在していましたが、生検の結果は悪性の所見なし。

 CTでも癌などの重大な病気を認めませんでした。便にも病原菌なし。

 下痢にたいして整腸剤を開始しましたが、全く効果がありません。栄養剤や漢方薬も試しましたが下痢は止まらず。

 当然患者さんからは 

 「なんとかなりませんか?」 

と言われ、打つ手が無くなった小生は、大学時代の恩師に連絡、その患者さんを 「原因不明の下痢、胃・大腸の多発ポリープ」 として紹介しました。

 恩師は消化管(胃・小腸・大腸)疾患の専門家で、大学医局での小生の研究指導をしてくださった方でした。米国留学後、医局を出て多忙な市中病院に勤務される傍らで、厚労省の難病疾患対策の班会議に出席されるなど、精力的に活動していらっしゃいました。

 患者さんが転院してから二週間後、恩師から連絡があり、患者さんは 「Cronkhite-Canada症候群」 だったと聞かされました。治療には免疫抑制剤を使用し、症状が改善したと伺いました。

 その病気 「Cronkhite-Canada症候群」 は下痢の他、消化管ポリポーシス(口~食道~胃~小腸~大腸までポリープが多発する病気)、皮膚の色素沈着(肌が褐色調になる)、脱毛、爪の萎縮などを伴うもので、専門医試験に出題されるなどして、消化器内科医は疾患名だけなら一度は聞いたことがある病気です。

 なるほど、教科書を見直すと典型的な所見がほぼ揃っている!あちゃー…。恩師の慧眼に脱帽しました。

 同じ所見をみても皆目見当がつかなかった小生…。バックグラウンドとなる知識の量やさまざまな症例にあたった経験の差が彼我との間には歴然としていました。

 コーヒーのCMにありましたが、「違いのわかる男」 とは、こういうことを言うのですね (^_^;) 。

それ以来、「原因不明の疾患」 として他院に紹介する際には、一通り内科学の教科書を読み直すようにしている小生です。

0 件のコメント:

コメントを投稿