2014年7月30日水曜日

症例8 風邪をひいた後に長引くのどの痛みと発熱~亜急性甲状腺炎という病気  2012年1月31日 記事

1月31日(火) 雪

 寒い日が続いていますが、みなさまの体調はいかがでしょうか。
 週末まで当地は大雪に注意が必要と天気予報で言っていました。今年は寒くて雪が多い年です。
 
 昨日当院でインフルエンザ(B型)の方が見つかりました。休日診療所ではインフルエンザ陰性だったものの、学校でインフルエンザが流行していることから抗インフルエンザ薬を処方されたものの、1日経っても解熱しない、ということで当院に来られた方でした。

 抗インフルエンザ薬による解熱までの時間は、1日前後のA型に比べ、B型は2日くらいかかるので、注意が必要です。

 なお、みなさまには予防のためマスク、手洗い、うがいの励行をお願いいたします。

症例シリーズは、今回は ”亜急性甲状腺炎” を取り上げてみました。

耳慣れない病気かもしれませんが、風邪症状が長引くときには疑ってみるべき疾患です。

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 10年ほど前の勤務医時代。

 中年の女性前医で治療を受けたものの、2週間も風邪が治らないといい、外来を受診されました。

 風邪薬のほかに抗生剤を処方してもらっても、のどの痛みが続き、あまり体はつらくはないものの動悸を感じ、38度近い熱が続いて夜に寝汗をかく、という症状でした。

 診察したところ、のども赤くなく、扁桃も腫れていませんでしたが、頚部を触ると痛いと訴えました。脈拍は90回/分前後で、白血球は正常範囲で、炎症反応は軽度上昇していましたが、重大な疾患が潜んでいる状態とは思えませんでした。

 眼球突出はもちろん、発汗や手の震え、体重減少などのはっきりしたバセドウ病の症状も無かったのですが、動悸と熱があるので念のためということで甲状腺機能を調べたところ異常が見つかり、すぐ内分泌専門医に紹介となりました。
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 数日後、紹介状の返事に記されていた診断は ”亜急性甲状腺炎” 。

 上気道感染後に、甲状腺組織が破壊されて、貯蔵されていた甲状腺ホルモンが血中に漏れ出てしまい、甲状腺機能亢進症状を呈する病気です。

 40歳~50歳の女性に好発し(男性患者はほとんどみられないとのこと)、一度かかると免疫が出来るため二度はかからないと言われています。

 甲状腺が壊されるための頚部痛があり、甲状腺ホルモン過剰により体温が高くなる他、動悸、発汗、手指振戦を呈し、それが1ヶ月あまり続いてから、一時的に甲状腺機能低下状態となって半年ほどで回復するのが病気の自然経過です。

 約5%の症例ではそのまま甲状腺機能低下状態に陥るため、甲状腺ホルモン補充などの治療が必要となります。

 その後、なかなか ”風邪が治らない” というアラフォー女性は、甲状腺機能のチェックをすべし、を やぶ医者の心得 に加えました。

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 昨年の秋に当院に来院された、風邪を引いてから二週間、37℃台の発熱、のどの痛み、動悸が続くという中年女性に、もしやと思い甲状腺ホルモンを調べたところ、やはり甲状腺の異常が見つかり、専門医に紹介しました。

柳の下には時々ドジョウがいて、それもかなり大物のことがあるので要注意と感じています。

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