8月30日(火)
また総理大臣が変わります。
誰が首相になっても同じかもしれませんが、火中の栗をひろおうとする方はまだまだいらっしゃるのですね…
世界陸上で室伏選手が男子ハンマー投げで金メダルを取りました。体力的ピークを過ぎての世界一すごいことです。
小生も体力の衰えを少しでも遅らせるように節制に努めようと思いました。
ここ数日、日中は暑くなるものの、お盆前の猛暑とは違って風が涼しいようですが、高齢の方は熱中症にご注意ください。
今回は膵炎(すいえん)についてお話しします。
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膵臓(すいぞう)は胃や大腸、胆のうに比べると一般になじみの少ない臓器かもしれませんが、その働きは食物を消化吸収し、血糖をコントロールするためにはなくてはならないものです。
膵臓の位置はみぞおち~背中の中ほどです。腹部の内臓であるものの、輪切りにしたほぼ上腹部の中心、背骨の前にあります(上図オレンジ色のたらこ状の臓器)。
食べ物が胃から小腸に送られると、膵臓から万能の消化液の膵液(でんぷん、タンパク質、脂質をすべて分解し吸収しやすくする)が腸内に分泌されるおかげで、食べ物をどろどろに溶かされます。
膵臓のおかげで、我々は食べ物をよく噛まなくても消化・吸収できるのです。
また、膵臓からは血糖をコントロールするインスリン、グルカゴンといったホルモンが血液中に分泌し、糖代謝をコントロールしています。
その膵臓が炎症を起こすのが膵炎という病気です。
酒飲みの人が腹部が張って便秘になったり、もともと胆石のある人が、激しい上腹部痛ないし背中の放散痛による発作を起こし、病院に運ばれて腹部CTを撮ったら、膵臓が溶けかかっていたりという形で診断されることが多いのですが、特発性膵炎といって発症原因がはっきりしないこともあります。
そのほか暴飲暴食で発症したり、中性脂肪が1000を超えた人に膵炎が見つかったりすることもあります。
右のCTは腹部の正常像です。膵臓は中央の「へ」 の字がたの臓器です(画像は以下からお借りしました)http://www.niigata-cc.jp/contents/bumon/hosyasen/ct.html
膵炎は膵臓が種々の原因で炎症を起こす病気で、アルコールの飲みすぎで膵液が詰まりやすくなったり、胆石が膵液の出口をふさいでしまって、膵液が腸に流れなくなり、膵臓自体を自己消化してしまう状態です。
診断・治療が遅れると炎症が広がって腹部の内臓全体がやけどしたような状態になり激しい腹痛を伴い、腹水がたまる、腸が麻痺して腸閉塞になる、重症化するとショック状態、細菌性敗血症、多臓器不全などを起こして死に至ることもまれではありません。
以前経験した症例で、急激に膵炎を発症し、入院治療を行ったにもかかわらず、発症後12時間でショック、多臓器不全で亡くなった高齢男性を受け持ったことがあります。その症例では腹部CTでは膵臓はまだほとんど腫大しておらず、腹水もなく正常でしたが、血液検査で炎症マーカーと膵臓の逸脱酵素が異常高値でした。
右は典型的な急性膵炎のCT像です。膵臓は炎症で膨化し不明瞭になってしまっています。付近の内臓も炎症で毛羽立ったようになり境界がぼやけています
(画像は以下からお借りしました)http://www.shiga-med.ac.jp/~hqradio/students/c-6.html。
治療の基本は絶食、大量輸液、循環補助です。
腹痛が改善しても、なかなか膵臓のむくみが取れず、経口摂取を再開すると腹痛を訴えるなどして治療に難渋し、2か月間食事のできない患者さんを受け持ったこともありますが、大した症状がないのに、長期間食べられないのは想像以上につらく、いらいらしてノイローゼ気味になる方もいらっしゃいます。
普段飲酒もしないし、腹痛などの症状がない方でも、検診などの採血で膵の逸脱酵素(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなど)が高値だった場合は、潜在的な膵炎(自己免疫性膵炎など)や、膵臓の病気(膵癌など)が隠れていることがありますので、消化器内科の専門医にて腹部エコー、腹部CTなどで精密検査をうけるようにお勧めします。
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