2014年7月30日水曜日

症例3 潰瘍性大腸炎~医者になってから初めてみた劇症型  2011年10月27日 記事

10月27日(木)

 ここ数日、お天気が悪くじめじめと寒い天候でしたが、今朝はおてんとう様を拝むことができました。

 みなさま風邪などひかずお元気でしょうか。

 寒冷前線の影響か、気管支喘息の方は症状が悪化する傾向にあります。長引く咳や呼吸困難は喘息や肺炎の可能性がありますので、医療機関にかかって診察をお受けください。

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 さて、潰瘍性大腸炎という病気をご存知でしょうか。医者なら国家試験の問題に出たりするので名前だけなら知っている病気です。

 粘血便で発症し、放置しておくと腹痛や発熱などの全身症状をきたしながら重症化し、激しい炎症のため大腸が麻痺してしまい、腸内で発生する有害物質により、中毒性巨大結腸症という危険な状態になるため、大腸を全部手術で取り去る必要もある病気です。

 潰瘍性大腸炎は、「数か月間続く下痢や血便」 を訴える患者さんに、大腸内視鏡を行うとかなりの確率で見つかりますが、開業医や一般病院で見つかるのは初期の段階のことが多く、軽症の方は当院にも通院されています。

 小生が勤務医の頃、70歳代の女性が1か月続く下痢と食思不振で外来を受診しました。
111027uc111027colon 近医で下痢止めと抗生物質をもらったものの全く効果がなかったというので、まず入院していただき点滴を行って、浣腸をかけて大腸内視鏡を行いました。
 すると、いままで見たことのない強度の炎症で、大腸の中が文字通りぐちゃぐちゃになっていました。

(ちなみに左が正常大腸粘膜右が潰瘍性大腸炎の粘膜像です)

 粘膜を採取して顕微鏡で見たり、腸内の病原菌検査を行いましたが、入院後10日以上たっても診断がつきません。
 患者さんも血性下痢、発熱、絶食・点滴で徐々に衰弱し、小生の手には負えない原因不明の大腸炎と判断して、患者さんを高次病院に移送し大学で大腸疾患の研究をしていた先輩専門医にゆだねました。

 後日先輩にお会いした際うかがった話では、劇症型潰瘍性大腸炎と診断され、内科的な治療が効果がなく全身状態も悪化したため最終的に大腸を全部切除・人工肛門を増設し救命したとのことでした。

 20年の内科医生活で、初めて経験した劇症型の潰瘍性大腸炎+中毒性巨大結腸症でした。

 人工肛門増設で Quality of Life は低下しましたが、致死率の高い病気ですので、救命できたとうかがい、ほっとしました。

 日常診療には思いもよらない病気が潜んでいます。まれな病気をできるだけ見逃さないように心がけて診療していますが、自分の手に余ると感じた時は先達にお願いするタイミングが大切だと思いました。

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