2014年8月1日金曜日

症例10 酒に飲まれるな!アルコール依存症、アルコール性肝硬変  2011年4月1日 記事

4月1日(日) 雪・曇・一時晴

 新年度の始まりの日です。

 御家族が入学・就職・転勤などで心も体も落ち着かないというみなさまもいらっしゃることでしょう。

 気が張っている時は大丈夫でも、ふっ、と気が抜けると風邪を引いてしまう、そんな季節ですので防寒・風邪対策はまだ解除なされませんように。

 今日は雪が降っていましたが、暦が4月になり、気分を一新するため、ジョギングを始めました。
 心臓バクバク、脚はヨロヨロ、息はゼーゼーで、歩いているのと大差の無い速度ですが (^_^;)…。
 ま、怪我や故障しないようにせいぜい気をつけようと思っています。

今回はアルコール依存症(アルコール中毒)~アルコール性肝硬変の一症例を取り上げました。

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 勤務医時代のある春の日、30歳台前半の大柄な男性が、黄疸と腹部の張りを主訴に小生の外来を受診しました。(右の図はhttp://www.ask.or.jp/alcoholism.htmlから)

 大学生の頃からほぼ毎日、一升酒を飲んでいたとのこと。

 年齢不相応に皮膚も傷んで肌理も粗く黄色くなり、白目は黄疸で黄色くなって、胸には血管腫(大酒飲みに現れる皮膚症状)、腹部は腹水で臨月の妊婦のように膨らんでいます。食欲は全くないとのこと。

 即入院させ、薬と腹水を抜くことで腹部の膨満を軽減しました。翌日、上部消化管内視鏡検査を行ったところ、肝硬変につきものの食道静脈瘤が見つかり、即、結紮治療を行いました。

 入院2週間で黄疸や肝機能も落ち着き、食事量も安定したため外来で様子を見ることにしましたが、2ヶ月後にぱたりと外来に来なくなりました。

 自宅に電話をかけてみたものの、留守電に ”メッセージをどうぞ” と冷たく応答されるばかり。まぁ、仕方ないか…とそれ以降はこちらから連絡を取りませんでした。

 2年ほど経った年末のある日の深夜に、また彼と遭遇しました。病院の救急室に黄疸と腹水で搬送され、内科の拘束当番で小生が呼ばれたのです。

 ベッドに横たわる彼には、2年前より高度の黄疸と、腹水貯留、その上、意識障害(肝性脳症といい、体内の毒により頭がぼんやり~昏睡状態となる)皮下の出血斑(血小板や凝固因子といった止血のために必要な成分が肝硬変により破壊されたり作られなくなるため)が現れていました。

 即日入院とし、成分輸血や肝性脳症の治療薬の点滴等を行いましたが、すでに肝不全に陥った肝臓は働きを停止してしまった状態でした。

 まだ60歳台のご両親に、この2年間の生活を伺ってみると、前回退院後も酒浸りの状態で、結婚生活も破綻。酒を買えないようにお金を渡さなかったところ、友達に無心して酒を手に入れていたとのこと。
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 入院して、少し意識レベルが良くなった時に、彼に 

「どうすれば酒をやめられるか?」 

と尋ねたところ、戻ってきたのは

「何言ってるンすか先生、俺、全然酒なんか飲んでませんよ!」

の答え…。
 なんか話がかみ合わないなあ?と思っていた数日後、彼のベッドの枕の下から出るわ出るわ、飲みかけのワンカップが10本近くも…。

 おそらく頼まれた友人が差し入れていったものと推察されました。

 病院の管理上、明らかに問題ですので、詰問してみましたが

「入院しているのに酒なんか飲むわけないじゃないですか!」

と逆ギレされる始末。

 医局に帰って内科学書を調べるとなるほど、これは話に聞くKorsakoff症候群による作話か!と合点がいきました(下図はhttp://www.city.kyoto.jp/hokenfukushi/kokenzou/about/izon_f102.htmlより)
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 肝移植も視野に入れ治療を検討しましたが、禁酒が不可能な状態と結論づけられ、最終的には苦痛除去の緩和治療を行い、数週間後に永眠されました。

 小生より若い人が、ご両親よりも早くアル中が原因で亡くなる、というのはたまらなく残念で勿体なく、虚しい経験でした。

 この20年で酒を飲んで亡くなる人を
数十人看取ってきましたが、

酒を飲まなかったから死んだという人にはまだで会ったことがありません。

 酒量が多めと自覚のある方は、まだ遅くありませんので、まずは週1~2回の休肝日を作ってください。

 また、現代は男女同権の世の中ですが、女性は酒量を控えめにしてください(同じ量のアルコールを男女同じ重さの肝臓で分解するとした場合、女性の方が分解が遅いという研究報告があります)。

 そして季節柄、新入大学生の一気飲みなどは厳に慎んでいただきたい。

 酒は百薬の長ともいいます。これから花見のシーズンですが、酒量はほどほどに、長く楽しく飲んでいただきたいと思います。

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