2014年8月13日水曜日

症例18 食欲低下と高度の便秘、しかし大腸内視鏡異常なし? 最後にエコーでわかった卵巣がん    2013年8月30日 記事

8月30日(木) 曇り

 台風15号が北上中とのことで、日本列島はまたもや大雨・洪水災害の危険にさらされています。

 温暖化を止めるには、みんなで少しずつ我慢しないといけないということなのでしょうが、エアコンを止めて熱中症になるのも困ります。バランスをとるのが難しいところです。

 今日は、症例の更新です。
 これまで便秘を訴える患者には、腹部エコーは行っていませんでしたが、今回の症例に遭遇し、これからは積極的にプローブを当ててみようと思いました。

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 症例18  食欲低下と高度の便秘、しかし大腸内視鏡異常なし? 最後にエコーでわかった卵巣がん

 やせた小柄な高齢女性。 半年前から食欲低下と高度の便秘を自覚するようになり、かかりつけ医で胃カメラを受けたものの異常なし。胃薬と便秘薬を処方されたものの症状の改善がみられず、大腸ファイバーを希望し当院を受診しました。

 診察時腹部を触れたものの、便塊や癌を疑わせるような硬い腫瘤はふれず。

 全大腸ファイバーを行ったところ、挿入時やや苦痛を訴えたものの、無事一番奥(回腸末端)まで観察し、大腸癌による便の通過障害が無いことを確認し、改めて当科から緩下剤を処方しました。
 しかし、かろうじて排便はあるものの、患者さん曰く

 「お腹がキラキラする」

という腹部不定愁訴が続き、大腸検査翌日 当科を再診されました。

 高齢女性の腹部不定愁訴は比較的よく遭遇する病態ですので、安定剤を追加しで様子を見ようとも考えましたが、ふと念のため腹部エコーを当てておこうという気が起きました。

 そもそも腹部エコーは上腹部の内臓(肝臓、胆嚢、腎臓、脾臓、膵臓)を手軽にスクリーニングするのには有用ですが、腹部~骨盤腔に対しては、腸管内ガスや皮下・内臓脂肪が邪魔をしてほとんど所見が取れないのが一般的です。ましてや便秘の人は腸管ガスが多く、腹部エコーを行うことはいたずらに医療費を増やすことになりかねないと考えていました。
(もっとも最近は消化管に対しても体外超音波を使って積極的にスクリーニングする医師もいらっしゃいますが、一夕一朝では真似できないノウハウがあり、小生にとっては現時点では難しい技です)。

 ただ、対象者によって膀胱のほか、子宮、卵巣などが見えることがあり、その結果として、これまでに膀胱がんや卵巣嚢腫の茎捻転、子宮外妊娠・正常妊娠などを偶然見つけた経験が小生にはありました。その時も空振りでいいから一通り検査しておこうと思ったのだろうと思います。打席に立ってもバットを振らなきゃヒットがでませんからネ。

130828_ranso さて、エコーを上腹部に当てて、型通り異常がないことを確認し、次いで下腹部を走査した途端、見たこともない所見が眼前に広がりました。以下がその画像です。

 小児頭大のプリンスメロン (昭和の頃よく食べられていたメロンの一種。知らない世代もいらっしゃるかも知れません(^_^;)) くらいの嚢胞の壁から、サンゴのような腫瘍がいくつも生えている!

 その日のうちに総合病院に紹介し、後日卵巣がんにて手術予定との返事が届きました。

 卵巣がんについては東京逓信病院産婦人科の以下のサイトに詳しくまとめてありますのでご参考にして下さい。http://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/gan/gan_fujin/gan_fujin02.html

 便秘だからといって避けていましたが、結果的には最初から腹部エコーをやっておけば、初診時に診断できたのに…。また小生の経験値が上がりました。不惑を過ぎても毎日が勉強です…

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