2014年8月2日土曜日

C型肝炎新薬、重要なさじ加減~副作用に発疹、貧血、腎不全 朝日新聞朝刊 医療 平成24年5月29日 2012年5月30日 記事

5月30日(水) 曇

昨日の朝日新聞朝刊にC型肝炎治療薬の最新情報と今後の展望についての記事が載っていましたので取り急ぎアップしました。所々原文とは異なる記述がありますが文意は変えていません。

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 国内のC型肝炎の患者数は約200万人にのぼる。C型肝炎は肝臓がんの主な原因になるため、完治可能な治療薬の開発が望まれていた。

 昨年11月に新薬 「テラプレビル」 が登場、これまでの治療(ペグインターフェロン+リバビリン併用療法)で治らなかった、1型高ウイルス量の患者もウイルスの消失が期待できるが、一方で重い腎障害のため透析を余儀なくされたケースもあるという。

つらい…でも効果確認

 C型肝炎に感染している千葉県松戸市の63歳女性の女性は、2007年からウイルスを排除するため、ペグインターフェロン+リバビリン併用療法を48週間続けたが、ウイルスは消失しなかったため同じ治療をもう一度受けた。2010年2月には約3cmの肝臓がんが見つかり、ラジオ波焼灼療法でがんを壊死させる治療をうけた。

 その後、彼女は2012年2月からC型肝炎の完治をめざし新薬 「テラプレビル」 による治療を主治医の島田紀朋氏(新松戸中央総合病院 消化器肝臓科部長)の薦めで始めた。テラプレビルはC型肝炎ウイルスの増殖にかかわる、たんぱく分解酵素プロテアーゼの働きを阻害し、ウイルスの増殖を抑える薬である。

 治療開始から2週間でウイルスは消えたが、失神や貧血、食欲不振などの副作用に悩まされた。5月中旬にテラプレビルによる治療が終わり、今もペグインターフェロン治療は続くが、テラプレビルを使用していたときに比べると体調はだいぶ改善したという。「副作用がこんなにつらいとは思わなかったが、今後もずっとウイルスが消えていてほしい」と彼女は話した。

新薬の目を見張る効果!

 C型肝炎ウイルスには1型と2型の遺伝子タイプがあり、日本人では1型が7割を占める。テラプレビルは1型でウイルス量が多く、未治療のケースか、従来ほ治療では完治しなかった患者が対象となる。

 国内で行われた治験(臨床試験)では、
ペグインターフェロンリバビリンテラプレビル3薬併用治療で未治療患者の73%、従来の治療が無効で肝炎が再燃した患者の88%に、6か月間ウイルスが消失する効果を確認した。下図

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しかし…重い副作用

 テラプレビルは発売前から従来の治療法に比し重い副作用か課題となっていた。治験では貧血(約9割)、発疹(約4割)などの重い皮膚障害がみられた。

 発売元の田辺三菱製薬は薬の納入先を肝臓専門医が常勤し、皮膚科専門医と連携できる医療機関に限っている。

 厚労省も承認条件として患者3000人を対象に市販後に新たな副作用が出ないかどうか調査を求めた。
 その結果、当初想定されていなかった副作用として透析が必要になるくらいの重症の腎障害が明らかとなった(2012年5月8日時点で520施設、3358人に使用し17人に重症腎障害あり)。

 田辺三菱は使用開始から1週間以内は少なくとも週2回の腎機能検査を行い、腎機能の悪化が見られた場合は投薬を中止するように求めた。また日本肝臓学会は5月18日に指針を発表し、原則として66歳以上にはテラプレビルを使用しないように求めた。

 副作用回避の試み ~ 年齢や体格を見極めて処方 = 重要なさじ加減

 治験を中心になって進めた熊田博光氏(神奈川・虎の門病院分院長)は、 「医者のさじ加減の重要さ」を指摘する。

 熊田氏は副作用の危険が出やすいと予測される症例(66歳以上、体重50kg以下、もともと貧血でヘモグロビン値が低いなど)には、テラプレビルの投薬量を減量し、添付文書よりも少なめの用量(2250mg/日→1500mg/日)で処方している。その結果、抗ウイルス効果に差はない上に副作用の頻度が大幅に減ったという。

 テラプレビルはプロテアーゼ阻害薬の第1世代であり、現在国内では複数の 「第2世代」 薬の治験が進んでいる。第2世代では副作用はほとんどないと期待されており、早ければ2013年末にも承認される見通しだ。

今後の肝炎治療の展望について林紀夫氏(関西ろうさい病院長)は以下の様に語った。

 「肝炎の結果引き起こされる肝臓の線維化が進んでいないようなら、現在の治療に飛びつかず次世代の薬を待って治療するという選択肢もある。インターフェロンを使わずに済む治療薬の研究も進んでおり、肝炎の治療はここ数年で大きく変わるだろう」

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