2014年8月4日月曜日

症例16 やっぱりDM(ディーエムと読む=糖尿病のこと)がらみは難しい ~ 頭痛を伴わないクモ膜下出血   2012年10月5日 記事

10月5日(金) 雨→晴

 台風が去って、秋らしい気温になり、しぐれ模様でしたが、午後になって晴れています。

 時節柄、秋の花粉症(イネ、ブタクサなど)の悪化や気温、気圧の変化により呼吸器系疾患の悪化が懸念されます。ご自愛ください。

 さて、去年2011年8月の当ブログの記事に 

「重症なのに風邪症状だけ? 糖尿病に合併した心筋梗塞」 
http://utida-naika.blog.ocn.ne.jp/blog/2011/08/post_7a47.html 

をアップしました。

 心筋梗塞は、心臓の血管が詰まって激しい胸痛をきたし、重症の場合救急車が到着する前に死んでしまうこともあるという怖い病気です。

 長年糖尿病を患っていた患者さんが、心筋梗塞を発症し救急外来に来た際、たまたま当直医だった小生の冷や汗経験を題材にしたものでした。

 糖尿病に伴い、年余にわたる高血糖から起きる神経障害で痛みを感じにくくなると、足の傷からばい菌が感染したことも気づかず、最終的に糖尿病性壊疽といって下肢が腐り切断しなくてはならない状態になります。

 また神経障害によって下肢の神経だけではなく、全身の神経に影響が出て、痛みを感じにくくなったり、自律神経の血管を収縮させての血圧の調節がうまくいかなくなって起立性低血圧、また胃腸の神経が障害され、便秘や下痢になるなど、糖尿病は多岐にわたって高血糖による弊害が出現します。

 UKPDSという英国の大規模試験の結果から分かったことですが、合併症や生命予後の観点から、糖尿病は初期からきちんと治療すべきです

 試験の結果を平たくまとめると

 「検診で見つかった糖尿病を、放置しないで初期のうちから治療すると、10年以上経ってからの糖尿病合併症が少なくなり、その結果生存率も上がる

というもので 「遺産効果」 と名づけられています。

 夏の住民検診で 糖尿病 が疑われた方は、最寄りの医療機関を受診し、治療について担当医とご相談することをお勧めします。

 今回の症例は、糖尿病(医療業界ではDM[ディーエム]と略します)がらみの吐き気と体調不良の症例についてです。

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 70歳代の男性。30年近く糖尿病を患い、近医でインスリン療法をうけていたとのこと。

 10日くらい前から吐気と食欲不振を自覚し、近医で腹部CTや胃カメラを受けたものの異常なく、医者を変えてみようということで総合病院の内科を受診されました。

 診察してもこれといった異常もなく、スクリーニング採血を行っても、糖尿病性ケトアシドーシスなどの異常もなし。便秘気味とのことで、便潜血反応もチェックしましたが異常なし。

 でも、しつこく吐気が続き、食事が食べられないと訴えます。吐気止めを処方し、経過を見ましょうとお話した翌日、瞼が上がらなくなり、ものの見え方も変だといい独歩で再診されましたが、眼科的な異常については 「餅は餅屋」 ということで、即、眼科で診てもらいました。

 眼科で診察を受けた後すぐに脳外科に紹介され、ご家族が唖然としていると、脳外科でくだされた診断は

 くも膜下出血!!

即入院治療となったそうです。 

121005sah01  典型的なくも膜下出血は 

 「突然、頭が割れるような頭痛、バットで殴られたような頭痛で発症する」 

 と言われています。

 小生も救急外来で何度か遭遇しましたが、どなたも救急車で搬送され来る際、頭痛でぐったりして会話もできず、自分で歩くなどということはもってのほかといった状態でした。

121005sah02 件(くだん)の男性は、糖尿病による神経障害で痛みが麻痺したため、出血がある程度進んで、脳神経症状が明らかになるまで、原因不明の嘔吐と体調不良のみの症状だったということだったとは…

 DMにやられました…。

 糖尿病血管系の病気だけではなく、癌の温床になることもあり、臨床医にとって不倶戴天の敵だ、という認識を新たにしました。

 今年の夏の検診で糖尿病に引っかかった方が当院に来られたら、上記の遺産効果と本症例、例の心筋梗塞の症例のお話をして、早期から治療を始めようと思います。


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