2014年8月2日土曜日

数週間続く慢性の空咳? ”咳喘息” の可能性はいかがでしょうか  2012年5月10日 記事

120510ueno2_35月10日(木) 雨
 
 お待たせいたしました。しばらくぶりの更新です。

 ここのところ、暖かい日と肌寒い日が数日のサイクルで繰り返され、喉頭炎~気管支炎で来院される方が増えています。相変わらず不順な天候で、今日は冷たい雨が降っています。5月になっても薄手の上着はまだ手放せませんね。

 連休中、上野の科学博物館に行ってきました。インカ展は朝から押すな押すなの混雑で、うんざりしましたが、遺跡マチュピチュの3Dシアターを体験したり、インカ時代のミイラを興味深く観察してきました。

 また何度か動物園にも来たことがありますが、ちょうどパンダがいない時期にあたり、このような混雑は見たことがなかったので驚きました。

 上野の西郷さんの銅像も初めて見ました。太めのオヤジが犬に散歩をさせている構図には親しみがわきました。

 120510ueno1_3今回は長引く咳についてのお話です。先日は咳が原因で見つかった肺腫瘍のケースをアップしましたが、今回は 咳喘息せきぜんそく のお話です。

 当院にも風邪の後で長引く咳が治らないと訴えて来院される方がかなりいらっしゃいます。そんなときに忘れてはいけないのが 咳喘息 という病気です。 

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 呼吸するときにゼイゼイ~ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)を伴う場合、まず真っ先に考える病気が気管支喘息ですが、喘鳴は無いのに咳はが長く出て困る、という方はいらっしゃいませんか?

 ゼイゼイ言わない咳が続く場合、 咳喘息せきぜんそく: Cough Variant Asthma (CVA)」  という病気の可能性があります。
 
 咳喘息は、喘鳴を伴わない慢性咳だけが続く病気で、喘息の前段階と考えられ(咳喘息の約3割が気管支喘息に移行するといわれています)、アレルギー素因を持った女性に多く、再発を繰り返します。

 花粉黄砂が気管を刺激するためか、冬に風邪をひき、その後咳が長引いた患者が、春先に医療機関を受診するケースが多いそうです。
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 咳喘息は医師の間でも最近認識され始めたばかりで、内科の教科書にはまだ詳しい記載がないこともあり、診断は困難適切な治療がされないこともあるようです。

 その理由は、咳喘息の診断の決め手は、血液検査中の数値やレントゲンの所見ではなく、病気の知識のある医師による詳細な問診であるためです。


※ [実は小生にも苦い経験があります。
   風邪にかかった後、1か月間気管支炎として治療したものの、激し    い乾性咳が全く良くならないため、呼吸器内科専門医に紹介したと   ころ咳喘息と診断され治療を受けたら、ピタリと咳が治まったとおっしゃってニコニコして再来された方がいらっしゃいました。
   小生が疾患を想定・診断できず、その患者様にはご迷惑をおかけ   してしまいました…]

 咳喘息の病気の仕組みは気管~気管支が炎症を起こし、慢性的にせきが出るという風に説明されています。

 風邪の他の症状(発熱、鼻水など)は改善したのにせきだけが3週間も続き、咳止めが効かないようなら、かなり高い確率で咳喘息の可能性があります。

以下に咳喘息の診断基準を挙げました。

1. 喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒュー)を伴わない咳嗽が8週間以上持続する

2. 今まで、喘鳴、呼吸困難などの喘息になったことがない

3. 8週間以内に上気道炎(かぜ)にかかっていない

4. 気道過敏性の亢進(少ない量の刺激に気道が反応してすぐに気道が狭くなること)

5. 気管支拡張薬がよく効く

6. 咳感受性は亢進していない(咳をしやすい状態ではない)

7. 胸部X線で肺炎などの異常を認めていない

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上記をすべてを満たした場合
 「咳喘息」 と診断します。

 咳喘息の原因は現在も不明ですが、病状を悪化させる因子はいろいろあります。

・ 風邪(かぜ)、上気道炎

・ タバコの煙

・ 急激に気温が下がった時、冷たい風

・ 会話・電話・運動             など

 咳喘息の治療には、風邪薬、抗生物質、咳止めでは効果が無く、気管~気管支の炎症を抑える吸入ステロイドが効果的です。
 また、気管支拡張薬や抗アレルギー薬が併用されます。喘息への移行を防ぐ意味でも吸入ステロイド薬は有効です。

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 咳喘息は 開業医として是非知っておくべき疾患です。 

 長引く咳を訴える方には、当院で胸部写真や採血を行い、肺炎の所見や炎症反応が無ければと、喘息薬をお出しして経過を見ています。

 それでも体調不良が続く場合には、病院で胸部CTを撮って精査していただくようにお勧めしています。

 風邪の予防が大切ですが風邪症状が続く場合、よくお話を聞いてくれる医師のいる医療機関を受診し胸部CTや喀痰検査などの精密検査を受ける、という選択肢も、こんな世の中、自分の健康を守るために覚えておくべきことです。

以下に製薬会社の喘息情報サイトを乗せておきますので、ご参考にしてください。
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